マクロファージによる異物の貪食は、自然免疫系における感染防御の一翼を担っている。細胞内寄生性細菌の一つであるリステリア菌は、マクロファージに貪食されても、溶血素であるリステリアリシンO(LLO)等を産生して細胞質内へ脱出し増殖する。本研究では、細胞質内のリステリア菌に対するマクロファージの防御反応を解析するために、チオグリコレート誘導によって得られた腹腔滲出性マクロファージに、リステリア菌を感染させて遺伝子の発現をRT-PCRによって検出した。リステリア菌感染によって誘導される遺伝子と、細胞質内へと脱出できないLLO欠損リステリア菌感染によって誘導される遺伝子を比較した結果、SOCS3の誘導に関して差は認められなかったが、NO合成酵素であるiNOSの誘導に顕著な差が認められた。iNOSの誘導にはIFN-γが重要な働きをしていることが知られているが、IFN-γ受容体欠損マクロファージでも誘導が見られたことから、iNOS誘導に関与する因子の同定を試みた。 リステリア菌感染マクロファージの培養上清中にiNOSを誘導する物質が含まれていることから、LLOを欠いたリステリア菌で誘導できない遺伝子を検討した。1型インターフェロンがiNOSの誘導に重要であることを明らかにしたが、IFN単独刺激でのiNOS誘導は感染時に比較して低かった。次に遺伝子発現量は変わらないが、成熟型として細胞外に分泌される量の異なるIL-1に着目した。IL-1単独ではほとんどiNOS誘導は認められなかったが、IFNとの共刺激でiNOSの誘導が増強された。以上の結果から、リステリア菌感染マクロファージはIFNと成熟型IL-1を産生することで、iNOSの誘導を行っていることが明らかとなった。
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