研究概要 |
ヒトモノサイト由来DC (Mo-DC)に1.)LPSや2本鎖RNAなど微生物に特有の分子構造、2)プロスタグランジン、エストロジェンなどの生体内生理活性物質、および3)生理活性を示しうる環境化学物質等を添加することにより成熟DC (DC1、あるいはDC2)を誘導した。内分泌撹乱物質であるBisphenol A (BPA)によって成熟分化したDCは、濃度依存的にMDCおよびTARCの産生増加を示した。さらにBPAによって成熟したDCとHLA-DRの異なるアロナイーブTh細胞を共培養することにより、混合リンパ球培養反応を誘導した。これによって増殖、分化したTh細胞のケモカイン受容体(CCR4、CXCR3など)の発現、サイトカイン産生性(IFN-γ,IL-4,IL-5,IL10,IL-13,TGFβ1)を評価したところ、DCに添加したBPAの濃度に依存して誘導されたTh細胞のCCR4/CXCR3比、およびIL-4/IFN-γ比の上昇を認めた。以上より、種々の化学物質がDCに作用して、機能的に変化したDCが異なるTh分化を誘導しうることが分かった。このような観察は、抗原特異的免疫応答を抗原ペプチドのアナログのみならず、これらの化学物質に含まれる特有の構造物、あるいは、これらによってDCに発現してくる分子を用いることによってTh1/2応答制御が可能であることが分かった。現在、これらのアジュバント活性を有する物質がTh分化が終了したTh1あるいはTh2細胞のサイトカイン産生性を制御しうるかについて評価している。ペプチドリガンドのアナログを機能的に修飾を受けたDCに添加し、分化したTh細胞の産生するサイトカインを制御するという目的において、これらのアジュバント活性を有する物質の併用は鍵となる。
|