研究概要 |
抗原にIgMが結合することによって誘導される抗原提示経路について検討するため、卵白アルブミン(Ovalbumin, OVA)をTNPハプテン化し、TNP特異的マウスIgM抗体との培養によりOVA-IgM複合体を得た。Fcα/μRを高発現する腹控浸出細胞を抗原提示細胞として用い、OVA特異的TCRを発現するトランスジェニックマウス(OT-II)由来のCD4 T細胞、OVA-IgM複合体との共培養を行った。培養上清中のIL-2濃度を指標にT細胞への抗原提示経路について検討したところ、OVAはIgM抗体との複合体形成によってT細胞への抗原提示が促進した。この促進効果はIgM F (ab)_2抗体では認められなかったことから、OVA-IgM複合体が抗原提示細胞上のFcα/μRを介してT細胞へ提示される新しい抗原提示経路の存在が示唆された。この仮説を検討する目的で、Fcα/μR欠損ES細胞クローンの樹立を経てFcα/μR欠損マウスの作製を行った。野生型およびFcα/μR欠損マウスから得られた腹控浸出細胞を抗原提示細胞として用い、OVA-IgM複合体のOT-II CD4 T細胞への抗原提示経路について検討を行った。IgMによる抗原提示促進効果は野生型抗原提示細胞を用いた場合のみならず、Fcα/μR欠損抗原提示細胞を用いた場合においても同様に認められた。よってIgMを介したOVAの抗原提示経路にはFcα/μRは関与していないことが示唆された。
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