研究概要 |
人口の急速な高齢化、疾病構造の変化、在院期間短縮へ向けた政策や介護保険導入により、在宅療養者のケアニーズは、質・量ともに今後益々拡大すると予想され、退院後のケアの安全性・継続性の確保、即ちケア総体としての質を保証する仕組を早急に準備しておく必要がある。 こうした背景を踏まえ、本研究では、特に、療養場所の移行期を含めた在宅高齢者ケアにおけるクリティカル・パス(以下パス)を作成して、ケアの継続性・安全性・質の観点から評価することを目指している。 今年度は、パス作成のために必要な情報の整理・実態把握を行った。量的把握には至っていないが、先行研究のレビュー、専門職へのヒアリング、全国の訪問看護ステーションへの郵送調査(2,000箇所を無作為抽出)を通じて、以下のことが確認された。 1.療養場所である病院・居宅・福祉施設等では、ケア提供の際に優先される情報が各々異なる。 2.上記の優先情報の違い・内容は、各ケア提供者間で相互に理解されているとは言いがたい。 3.退院直後の在宅ケア開始時は、療養場所変更に伴う病状の変化や療養環境の調整等、事故発生リスクが高くケアの質の観点からも重要な時期である。 4.療養場所の移行期におけるケアの安全性や継続性に関し、以下のような実態がある。 (1)療養場所の移行期には、必ずしもケアの安全な継続に必要とされる情報が、移行先のケア提供者に適切に引き継がれているとは限らない。 (2)移行先のケア提供者(訪問看護ステーション等)は、前の療養場所(医療機関等)に働きかけ、報酬とは無関係に、必要な情報を収集して療養環境の調整等を行い、安全な療養生活の保証に努めている。このような活動により、事故の回避につながっている場合も少なくない。 (3)在宅ケア開始時点における、家族介護者の在宅療養に対する精神的・介護技術的準備は、必ずしも十分とは限らない。
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