人口の高齢化や疾病構造の変化、それに対応した政策等により、在宅高齢者ケアのニーズは益々拡大すると予想され、退院後のケアの安全性・継続性即ちケア総体としての質保証の仕組の確保が急がれる。 本研究では、特に、療養場所の移行期を含めた在宅高齢者ケアにおけるクリティカル・パス(以下パス)を作成してケアの継続性・安全性・質の観点から評価することを目指した。 先行研究のレビュー、専門職へのヒアリング調査、全国の訪問看護ステーションへの郵送調査、移行期を中心とした訪問看護記録等のレビューを通じ、以下のことが確認された。 1.高齢者の療養場所である病院・居宅・福祉施設等では、ケア提供時の優先情報が各々異なる。 その違いは、ケア提供者間相互で理解されているとは言い難い実態がある。 2.療養場所の移行期におけるケアの安全性や継続性に関し、 (1)移行先のケア提供者(訪問看護ステーション等)は、前の療養場所(医療機関等)からの必要情報の収集や療養環境の調整等を無償で行い、こうした活動で事故が回避されている場合も少なくない。 (2)在宅療養開始時点において、介護者側の準備(精神面・介護技術面)は必ずしも十分ではない。 3.療養場所の移行期を含めたパス作成の際には、移行前の療養場所即ち医療機関内のパスの多様性(疾患群による違い、施設による違い等)を考慮する必要がある。つまり、疾患毎ではなく、高齢者に多い疾患に基づく状態(病状やケア内容等)の共通性を類型化し、その類型毎のパスが、移行期のケアの質保証の点から有効であることが明らかになった。移行期にある在宅療養高齢者に必須のケアや情報を整理することを優先した結果、ケア内容・病状・介護力等の組合せ(特に医療的処置等と介護力の組合せ等)により、移行期の安全なケア提供に必要な情報群の類型化の可能性が示された。
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