研究概要 |
慶應義塾大学医学部のスキルラボの最大の特徴は、常勤の管理者が、医療従事者(看護師)であり、かつ、自らシミュレーショントレーニングのインストラクターを務めることが可能な人材であり、スキルラボとして、自発的に講習会の企画、受講生の募集などを行える点である。 当クリニカルシミュレーションラボの業務日報より集計すると、2003年8月〜2004年7月の1年間では、利用者数はのべ5412人であり、開催された教育プログラム数は554件であった。引き続き、2004年9月〜2005年8月の1年間においても利用者数はのべ5564人であり、開催教育プログラム数は600件であった。開設以来2年継続して年間約5000人が利用したという事実は、本邦の医育機関において、このようなトレーニング施設を常設し運用することの必要性や、運用方法によって需要を喚起することができることを明らかにしている。(米国最大級と言われるピッツバーグ大学のシミュレーショントレーニング施設(WISER)でさえも、年間約10,000人が利用) また、救命処置はスキルラボにおけるトレーニングで中心的な役割を担うが、恒常的に講習会を開催することにより、教職員の大半が受講することができ(例:2004年1月〜2005年1月で全看護系職員669人中、575人が受講)、以下の成果が得られた。(1)2006年1月18日付けで病院長より、院内の全医師、看護師が急変時にAEDを使用することが業務命令として発令された。(2)2004年9月より、院内約30カ所にAEDを配備したが、その後2006年2月までに、院内で7回AEDが使用され、うち4回に電気的除細動がなされ、うち2名は社会復帰した。この2名の救命は、AEDの配備とトレーニングプログラムの整備がなされて、初めて達成されたと考えられ、スキルラボにおける恒常的な講習会開催が寄与したものと考えられた。
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