研究概要 |
ヒトペプチドトランスポータ2(SLC15A2,hPEPT2)は腎臓や肺に発現し、小分子ペプチドやペプチド類似薬物の輸送を媒介している。公的SNPデータベースに報告されているhPEPT2のアミノ酸変異を伴う5種類のSNPのうち、他の種においても保存されており、その変異が機能に影響を及ぼすと予想されるR57H並びにP409Sの変異体について機能解析を行った。その結果、P409S変異体とwild typeは同程度の輸送活性を示したが、R57H変異体ではほぼ完全に輸送活性が消失していた。R57H変異体を発現させたHEK293細胞から粗膜画分を調製しウエスタンブロット解析を行ったところ、hPEPT2タンパクが検出された。また、免疫染色の結果、R57H変異体は細胞膜に発現していることが卵母細胞発現系で確認された。従って、R57H変異によるPEPT2の輸送機能低下は、PEPT2の細胞膜局在化の異常によるものではなく、輸送機能障害または基質認識異常によるものと推察された。 小腸に発現するヒトペプチドトランスポータ1(SLC15A1,hPEPT1)と側底膜型ペプチドトランスポータは、ペプチド類似薬物の腸管吸収に重要な役割を果たしている。ペプチドトランスポータを介した経上皮輸送予測システムの開発を目指して、3コンパートメントモデルに基づいた速度論解析を行った。その結果、両トランスポータの取り込み及び排出方向の速度定数に基づいたコンピュータプログラミングの開発に成功し、非定常状態における基質輸送を精度良く予測することができた。現在、ペプチドトランスポータの発現や遺伝子情報を加味した、より精度の高いシミュレータ開発を行っている。
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