1)非食細胞型NADPH oxidase(NOX1)遺伝子欠損マウスの作製 マウスNOX1遺伝子をクローニングし、第7エクソン近傍を標的部位としてneomycin耐性遺伝子に連結したターゲティングベクターを構築した。本ベクターにてES細胞相同組換え体の分離に成功し、集合キメラ法により得たキメラマウスとC57BL/6マウスとの交配により生殖細胞系列への伝搬を確認した。これらマウスを交配することによりNOX1遺伝子欠損マウス(NOX1-KO)の作製に成功した。 2)虚血再灌流障害におけるNOX1の役割 マウスより摘出した心臓をランゲンドルフ法により灌流し30分間の全虚血後60分間の再灌流負荷を行った。NOX1-KOにおいて再灌流時に心機能低下および心筋細胞傷害が認められたが、野生型マウス(WT)と比較して有意な差違は認められなかった。 3)心リモデリングにおけるNOX1の役割 NOX1-KOおよびWTにAngiotensin II(Ang II)を持続投与することにより心肥大モデルを作製したが両群に有意な差違は認められなかった。しかし同時に測定した血圧がNOX1-KOにおいて低下していることを新たに見いだした。 4)Ang II持続投与による昇圧反応におけるNOX1の役割 NOX1-KOにおいてはAng II投与による血管壁活性酸素種(ROS)の産生亢進および昇圧反応が有意に抑制されていた。一酸化窒素(NO)合成酵素阻害薬の投与を行うと、血圧は野生型マウスと同程度にまで上昇した。一方、内皮依存性の血管弛緩反応および血管内cGMP含量はAng II投与KOマウスにおいて保持されていた。 以上の結果より、NOX1由来のROSはNOの不活性化を介してAng IIによる昇圧反応に関わっていることが明らかとなった。
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