アポE含有HDL定量分析法の確立とその臨床的意義を検討するために、今年度も研究計画に沿って昨年度に引き続き「血中アポE含有HDLの定量分析法の確立」を中心に研究を進めた。 サンドイッチELISA法による選択的測定法の検討では、捕捉抗体に抗アポリポタンパク質A-I抗体(抗アポA-I抗体)、検出抗体にビオチン標識抗アポE抗体を用いた場合、VLDLやIDLなどHDL以外のアポE含有リポタンパク質が非特異的にプレートに結合することが最大の問題点であった。これを解決するために洗浄液の組成やブロッキング液の種類・組み合わせを広げて検討した結果、洗浄液組成に非イオン性界面活性剤であるプルロニックF68を加えることで改善されたが、十分なS/N比を得ることは困難であった。検出感度を上げる目的で蛍光色素(Amplex Red)の導入も試みたが改善は認められなかった。検出シグナルが小さいことの原因としては、超遠心やヘパリンアフィニティクロマトグラフィで粗精製したアポE含有リポタンパク質はウエスタンブロッティグ法で判断する限り予想以上にアポA-I含量が少なく、抗アポA-I抗体ではアポE含有HDLを十分に捕捉できていない可能性が考えられた。また、アポE含有HDLはアポE非含有HDLと競合して抗アポA-I抗体に結合することも一要因であった。捕捉抗体に抗アポE抗体、検出抗体に抗アポA-I抗体を使う系においても、アポE含有HDLと他のアポE含有リポタンパク質(VLDLなど)が競合して抗アポE抗体に結合するため、VLDL濃度が高いサンプルでは影響を大きく受けた。さらに、捕捉抗体および検出抗体の両方に抗アポE抗体を使用し、サンプル反応液中に非イオン性界面活性剤などを共存させることで選択的にアポE含有HDLのみを捕捉する系についても検討を行ったが、非特異的なプレートへの結合が再度問題となった。
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