研究課題
血管内皮プロテインCレセプター(EPCR)は、血液凝固制御因子であるプロテインCに対する特異的受容体であり、トロンビン・トロンボモジュリン複合体によるプロテインC活性化反応を高親和性の反応に変換して促進する。この分子は、正常では血管内皮のみに発現しており、その一部はメタロプロテアーゼによって切断され、可溶型になることが報告されている。従って、様々な病態における血管内皮障害の特異的な指標になりうる。実際に可溶型EPCRの測定が血管内皮障害の検出に有用であるかを検討し、膠原病の血管炎、糖尿病の血管障害、動脈硬化、癌患者での新生血管形成などにおける有益なマーカーとして応用したい。すでに、抗凝固作用を持つ血管内皮特異的なEPCRの可溶型に対する検出法を確立しており、現在種々の病態での可溶型EPCRの測定を行っている。膠原病内科と共同研究しているが、その結果、可溶型EPCRは正常では検出されないが、膠原病における血管炎の一部(22%)で上昇していた。全身性エリテマトーデス(SLE)の患者では、疾患活動期に可溶型EPCRの増加が認められ、非活動期では減少しており、SLEによる血管内皮細胞の傷害が考えられた。また、SLEではステロイド大量療法により可溶型EPCRが増加する症例と低下する症例があった。症例によっては大量ステロイド投与によりさらに血管内皮の傷害が起こる場合が考えられた。現在も症例を増やして検討中であるが、可溶型EPCRの測定が治療効果や再発、予後の指標となるかなどにてついて詳しい検討を行いたい。また、病的な状態になると可溶型EPCRが上昇するのであれば、血清に多量に存在する可溶型EPCRがプロテインC活性化反応に影響していることも考えられ、凝固制御に関わっているかもしれない。今後はそのような可溶型EPCRの機能も調べていきたい。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
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