研究概要 |
臨床現場で分離される病原細菌の多剤耐性化が進行しており大きな問題となっている。アミノグリコシドはグラム陰性桿菌感染症に主に用いられる抗菌薬の一つである。この薬剤に対する耐性機序はアミノグリコシド修飾酵素が最も有名であるが、近年アミノグリコシド産生放線菌が産生する16S rRNAメチラーゼと類縁の酵素を産生するグラム陰性桿菌の存在が明らかになった。この酵素は現在3種類(rmtA,rmtB,armA)が知られているが、どの程度日本の臨床現場に存在するのか明らかではない。 そこで、これらの酵素の検出方法についてまず検討した。これらの3種類の酵素は臨床で用いられるほとんどのアミノグリコシドに高度耐性を示す特徴がある。そこでアミノグリコシド修飾酵素では不活化されにくいアミノグリコシドであるアルベカシンをスクリーニングに使用した。すなわちアルベカシンに高度耐性を示す菌株を16S rRNAメチラーゼ産生菌の候補とした。次に産生する酵素の型別を行うためにPCR法を用いた。煩雑さをさける目的で、multiplex PCR用PCRプライマーを設計した。 臨床現場から実際に菌株を集める前段階として研究室に保管されてあるグラム陰性桿菌2877株(Pseudomonas aeruginosa744株,Acinetobacter属54株,Serratia marcescens419株,Escherichia coli760株,Klebsiella pneumoniae505株,Klebsiella oxytoca49株,Enterobacter属346株)について検査を試みた。その結果P.aeruginosa4株,E.coli3株,K.pneumoniae4株,K.oxytoca1株,S.marcescens2株,A.baumannii1株がアルベカシン高度耐性を示した。これらの株はすべてmultiplex PCR法で16S rRNAメチラーゼを保有していることが確認された。内訳はrmtA4株(P.aeruginosa4株),rmtB8株(E.coli2株,K.pneumoniae4株,K.oxytoca1株,S.marcescens1株),armA3株(E.coli1株,S.marcescens1株,A.baumannii1株)であった(Yamane et al. Emerg Infect Dis 2005 in press)。これらの結果から16S rRNAメチラーゼ産生菌のスクリーニング方法とmultiplex PCR法による遺伝子型別は実際に大量の菌株を検査するのに有効な方法であることが確認された。
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