研究概要 |
【背景】肝炎の進展には酸化ストレスの関与が示唆され、喫煙や飲酒、肥満などの生活習慣や、薬物代謝酵素やサイトカインの遺伝子多型などの遺伝的感受性要因が報告されているが、肝炎進展を抑制する食品や栄養素、それらと遺伝的感受性要因との相互作用についての知見は十分でない。 【目的】本年度は、慢性C型肝炎の進展に関与する食品や生活習慣を明らかにする。 【方法】症例(肝癌)対照(肝硬変、慢性肝炎)研究の手法で、研究参加への同意を得た佐賀県在住の40〜79歳の慢性C型肝炎患者321人、肝硬変患者77人、肝癌患者114人に自記式の半定量食物摂取頻度調査票を用いて郵送法で調査を行いそれぞれ272人、60人、87人から回答を得た。食品摂取頻度と肝癌の関連をlogistic regression modelで検討した。 【結果】多量飲酒(オッズ比(OR):2.8,95%信頼区間(CI):1.3-5.8)と喫煙(OR:2.4,95%CI:1.0-5.5)は肝癌と有意な正の関連を示した。性、年齢、飲酒、喫煙を調整したところ、野菜(緑色、淡緑色、黄色)、肉類(鶏、豚、牛、加工肉)、豆腐、緑茶はいずれも明らかな関連はなかったが、果物(毎日vs週1回以下、OR:0.4,95%CI:0.2-0.8)、コーヒー(毎日vs週1回以下、OR:0.5,95%CI:0.2-1.0)の摂取で有意な負の関連を認めた。 【考察】肝癌の最大の危険因子はC型肝炎ウイルスの感染であるが、本研究では慢性肝疾患患者を対照群に設定することで影響を除外できた。肝癌の危険因子として飲酒と喫煙が、防御因子として果物とコーヒーが検出され、これまでの疫学研究の報告を指示した。今後は食事調査票をもとに栄養素摂取量を推定し肝癌との関連を検討するとともに遺伝的感受性要因として各種遺伝子多型を判定し食事由来の因子との相互作用について検討していく予定である。
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