文部省科学研究費・特定領域研究「コホート研究による発がん要因の評価に関する研究」(現:大規模コホートの運営委員会、以下文部省コホート研究斑)では、発がんに関連する要因の解明を目的とした大規模なコホート研究が実施されている。文部省コホート研究による1988〜1999年までの大規模コホートの追跡期間中に肺がんで死亡した者のうち保存血清のある者を症例、またコホート集団内で保存血清のある者から、性、年齢(±3歳)、調査地区、採血年を個別にマッチングした生存者を対照としたコホート内症例対照研究(症例:対照=1:2または1:3)により、血清炎症関連物質と肺がんリスクとの関連についての研究を行う。本年度は、研究代表者が所属する研究機関において、本研究に対する倫理審査委員会に申請し承認を得た。大規模コホートの運営委員会事務局である名大予防医学教室より対象保存血清を所属研究機関に搬送し、ELISA法にて炎症関連物質である高感度C-reactive protein(hsCRP)、Heat shock protein 70(Hsp70)および酸化ストレスの指標として酸化LDLの測定を行った。症例対照併せてhsCRPは842人、Hsp70は789人、酸化LDLは839人の血清で測定可能であった。測定結果は、大規模コホートの運営委員会事務局にてベースライン時の個人データと併せたデータファイルを作成した。現在、そのデータファイルを用いて、条件付ロジスティック回帰モデルにより解析を行っており、粗解析ではHsp70高値群では低値群と比べ肺がんリスクが高い傾向を得ている。更に詳しくベースライン時の質問票から得られた喫煙習慣などの生活習慣や以前の研究で測定を終えている血清カロテノイド値などの交絡要因を考慮するなど詳細な解析を行い、来年度発表を予定している。
|