研究概要 |
目的:職業性ストレスや睡眠などの影響を調整して,疾病休業と昼間の眠気との関連を横断的に調べた。 方法:複数の事業所に勤務する労働者を対象に自記式質問紙調査を実施した。調査票は合計4515名の労働者に配布され,合計3400名から回収された(回収率75.3%)。このうち,日勤の男性1443名(平均42歳)と女性1141名(平均36歳)を解析対象とした。調査項目は次の通り:職業性ストレス(米国NIOSH職業性ストレス調査票),睡眠習慣,昼間の眠気(Epworth Sleepiness Scale, BSS),過去1年間にとった疾病休業(含.有給休暇)の総日数と総回数,基本属性と生活習慣。統計解析は疾病休業(のべ3日以上/未満)を従属変数,昼間の眠気(ESS 11点以上/未満)を独立変数,年齢,併存疾患,睡眠時間,不眠,睡眠呼吸障害,婚姻,子供数,生活習慣,雇用形態,職種,残業,職業性ストレス変数を交絡要因とした多重ロジスティック回帰分析を行った。また,昼間の眠気と疾病休業による職業性ストレス得点の差を,年齢を共変量とした共分散分析によって検定した。 結果:眠気が強いと疾病休業は男性では増加し(調整済オッズ比1.73,95%信頼区間1.01-2.98),女性では減少した(0.50,0.23-1.08)。男性では休業3日以上の有無にかかわらず,昼間の眠気が強いと量的労働負荷は高かった(p<0.05)。女性の場合,この効果は3日未満の休業群では認められたが(p<0.01),3日以上の休業群では有意ではなかった。他の職業性ストレス変数に関して,眠気の主効果または交互作用は男女とも有意ではなかった。 結論:昼間の眠気が強いと,男性は疾病休業をよりとったが,女性はむしろとらなかった。この差は眠気,疾病休業,量的労働負荷の相互関係が性別によって異なるからかもしれない。
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