本研究は前向きコホート研究によって虚血性心疾患(CHD)入院患者の退院後の喫煙習慣を把握するとともに、その関連要因を明らかにすることを目的とした。CHDにて入院した喫煙者90人に退院後3カ月間の喫煙習慣を電話にて尋ね、性、年齢、臨床所見(病名(心筋梗塞(AMI)、不安定狭心症(UA)、安定狭心症(SA))、CHDの既往、入院時症状(胸痛、呼吸困難、Killip分類)病変冠動脈数、CPKピーク値、緊急入院、経皮的冠動脈インターベンション・冠動脈バイパス術の施行)、入院前喫煙習慣(1日当たりの喫煙本数、喫煙年数、自記式質問紙によるニコチン依存度指標)との関連を調べた。退院後3カ月間禁煙を維持した者(非喫煙者)は58人(64%)であった。喫煙者(退院後3カ月以内に喫煙を再開した者)は非喫煙者に比べてSAが多く(喫煙者28%、非喫煙者10%、p=0.086)、緊急入院が少ない(喫煙者66%、非喫煙者83%、p=0.075)傾向があったが、その差は有意とまではいえなかった。その他に退院後3カ月間の喫煙習慣と有意な関連を持つものはなかった。本研究におけるCHD入院患者の禁煙率は過去の日本での先行研究の結果とほぼ同じであった。本研究では喫煙習慣の判定が自己申告に基づくこと、近年のタバコに関する社会環境の変化、ニコチン依存度関連遺伝子、サンプルサイズが大きくないこと等が結果に影響を与えているかもしれないが、これらを十分に調査できなかったことは課題として残される。また、本研究ではCHD患者において退院後の禁煙と有意に関連した因子が抽出されず、健康な一般中高年齢者における傾向との比較をするに至らなかった。この点は今後さらに研究されるべき課題である。
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