埼玉県のM町と0町では、現在、肝癌死亡率が高いという問題がある。M町、0町では昭和35年、昭和43年頃、肝炎の流行があった。昭和44年に肝炎流行に関する疫学調査が行われており、その結果、肝炎流行には、肝炎ウイルスの関与が示唆されたことや患者発生に地域集積性があったことなどが報告されている。本研究では、現在M町・0町の肝癌死亡率の実態、肝癌死亡率が高い原因と過去の肝炎流行との関連性、現在の肝炎ウイルス感染者の実態を明らかにすることを目的とする。平成16年度に、M町、0町の肝癌死亡率の現状および、M町、0町の肝癌、肝疾患死亡者調査を実施し、平成16、17年度に、HCV、HBV感染者の実態を明らかにするための住民調査を実施し、集計した。また、3町のウイルス肝炎実施方法の現状、実績について整理し、今後の課題を検討中である。 M町、0町、及び近接するH町における、HCV、HBV感染者の実態を明らかにするための住民調査:C型肝炎ウイルス検査陽性と関連する要因について、3町共通してC型肝炎ウイルス検査陽性者の割合が多くなっている要因は、60歳以上であること、肝疾患の既往、外科手術の既往、輸血歴であった。その他の要因については、M町・0町は、昭和35〜45年の頃に井戸水を飲用していた者、35年以上居住している者、昭和35〜45年頃に肝炎流行地区に居住歴がある者に検査陽性者が多かった。これらの要因は、年齢(高齢であること)と関連している可能性がある。さらに0町では、妊娠分娩時の出血の既往のある者、肝癌家族歴のある者に検査陽性者が多かった。H町では、妊娠分娩時の出血の既往のある者に検査陽性者が多かった。
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