研究代表者は、東京大学心療内科に所属し内科医・心療内科医として臨床に携わる中で、漢方薬の投与や気功を利用した東洋的リラクセーション法を取り入れた臨床実践を試み成果を挙げてきた。このような臨床経験からは、補完代替医療の中に「病い(illness)の癒し(heal)」のみならず「疾病(disease)の治癒(cure)」にも有効性が期待できるものが確かに存在することを認識するようになった。東京大学医学系研究科では、脳波や自律神経系を中心にした精神生理学的アプローチ研究や、多種の医学的・心理学的データを多変量解析によって検討する行動科学的アプローチ研究を行うことで、病気における身体的・心理的側面について解明する量的研究法を身につけた。その後千葉大学社会文化科学研究科に進学し、文化人類学・医療人類学・医療社会学といった視点から、現代の補完代替医療における治癒現象に対して参与観察や聞き取り調査を用いた病気における社会的・文化的側面を解明する質的研究法を実践した。2003年度より赴任した早稲田大学人間科学部では、自然科学的な量的研究法と人文社会科学的な質的研究法を融合させた新しい研究法に基づいた研究を試みている。 本研究では、研究代表者の心身医学+医療人類学という研究スタイルのオリジナリティーを活かし、補完代替医療における"癒し"のメカニズムに対して、身体的なレベルから心理的・社会的・文化的レベルにおよぶ総体的な視点からの解明を目指す。特に、米国NCCAMが分類した5つの補完代替医療カテゴリーの中でも(5)エネルギー療法(energy-therapies)を中心に研究を行う。 2004年度の成果として以下のものが挙げられる。補完代替医療を利用する患者の社会文化的背景に関する原著論文1編、気功法・呪術的治療の効果に関する科学的・医学的研究のレビュー論文2編、その他総説論文2編である。
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