癒しメカニズム解明のため以下の4方面からの研究を行った。 (1)スピリチュアリティに対する批判的医療人類学研究:スピリチュアルケアの重要性が高まりつつある中、特に補完代替医療従事者はスピリチュアリティへの治療的アプローチを重視している。しかしながら、医療者が患者のスピリチュアリティを扱うことには多くの問題性が秘められている。2論文の執筆と、第6回医療マネジメント学会東京地方会学術集会で特別講演「スピリチュアリティへの医療職の関わり」を行った。 (2)補完代替医療へのフィールドワーク研究:2論文の執筆と、第39回日本文化人類学会で「補完代替医療をめぐる<つながり>;病いの経験を通じたつながりの再構築」を発表。 (3)Narrative Based Medicine (NBM)研究:近年臨床における"語り"を重要視するNBMが注目されている。千葉大学大学院社会文化科学研究科の鈴木勝己氏と共に、原著論文2・総説論文1を執筆し、第46回日本心身医学会総会シンポジウム「心身医学の研究方法の開発を目指して;要素還元主義による研究を乗り超えて」にて「心身医学研究における医療人類学の貢献」を発表。 (4)瞑想の脳科学的研究:東京大学大学院医学系研究科の鄭志誠氏と共に次のような研究を行い、現在論文執筆中である。〔方法〕瞑想特有の心理生理学的特性を明らかにするために、経験年数3〜30年の8名の気功実践者を対象とし、3種の瞑想(#1呼吸を数える事に集中、#2没我状態、#3気功実践)を各10分間、前後の安静閉眼時の脳波を記録。〔結果〕瞑想時ではtheta・alpha1/2・beta1/2/3の周波数帯域でパワー値が有意に減少。頭蓋トポグラフィーではtheta帯域において経験年数に応じて重心が前頭側に位置。長期的な瞑想経験が脳の永続的な変化・脳機能の可塑性をもたらす可能性が示唆された。
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