C型慢性肝炎におけるインスリン抵抗性発現の機序の解明を目的とした。 C型肝炎ウイルス(HCV)の唯一の肝発癌モデルである、HCVコア遺伝子を導入したトランスジェニックマウスにおける、インスリン刺激時のインスリン受容体以下の細胞内シグナルを検討した。対照マウスと比べてトランスジェニックマウスでは、insulin receptor substrate-1(IRS-1)のチロシンリン酸化が低下していた。IRS-2については明らかな差異を認めなかった。トランスジェニックマウスの肝臓内には炎症性サイトカインの一つ、tumor necrosis factor(TNF)-αが増加しており、マウスに抗TNF-α抗体を事前投与したところ、インスリン抵抗性の改善を認めた。また、IRS-1のチロシンリン酸化もある程度回復した。TNF-αがインスリン抵抗性の一因と考えられるが、その由来は明らかになっていない。 HCVコア蛋白定常発現肝癌由来培養細胞においても、インスリン刺激時のIRS-1チロシンリン酸化は低下していることを確認した。これについても炎症性サイトカインの検討を行っている。 酸素電極を用いるin vitroの検討で、HCVコア蛋白によるミトコンドリア電子伝達系complex Iの抑制が示されているが、現在のところインスリン抵抗性との関連は明らかになっていない。
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