B型肝炎ウィルス(HBV)感染した肝細胞におけるアポトーシス制御機構の異常を解析する目的で、HBVウィルス分子のひとつであるXタンパク質と相互作用を有する宿主タンパク質であるHBXIPの解析を進めている。HBV感染細胞におけるHBXIPノックダウン効果を検討する目的で、血清由来のin vitroウィルス感染系の構築を行った。その結果、ヒト肝組織由来の細胞株であるHepG2細胞の培地に複数の分化誘導薬剤を経時的に添加すると、HBV感染に対する細胞の感受性が高まることを見いだした。この分化誘導後の培養細胞株にHBV陽性の患者血清を添加すると、シャーレ内でウィルス感染が成立し、HBVの複製・増殖が再現された。そこで、HBXIPに対する特異的なsiRNAを合成し、内在性HBXIPノックダウン細胞の細胞増殖活性とウィルス感染に対する感受性を検討したところ、内在性HBXIPノックダウン細胞では細胞周期がG2/Mに停止すると同時に、感染ウィルスの複製増殖活性も有意に低下するという可能性が示唆された。しかしながら、本研究の遂行中にヒト遺伝子配列解析結果が更新され、本来91アミノ酸で構成されていると想定されていたヒトHBXIPの遺伝子配列の転写開始地点の上流にもうひとつ転写開始地点が存在しており、ヒトHBXIPとして174アミノ酸からなる分子が産生されている可能性がGeneBankにて明らかとなった。そこで、我々がこれまで解析してきた91アミノ酸HBXIPと174アミノ酸HBXIPのいずれがヒト肝細胞で抗アポトーシス作用を担っているのかについての再検討をあらためて進めているところである。
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