研究概要 |
1、UDP-Nアセチルガラクトサミン転移酵素(GalNAc transferase)アイソザイム(T1,T2)のアミノ酸配列において親水性および抗原性富む配列をコンピューター解析し、各々23、24残基のペプチドを合成した。合成したペプチドにKLHを付加し、ウサギへの免疫により抗血清を作製した。得られた抗体を用い、通常型膵癌の手術材料における発現を免疫組織染色(ABC法)により検討した。なお、発現の程度は染色陽性細胞数の比率で4段階に分類した:(-)〜5%、(+)5〜20%、(++)20〜80%、(+++)80〜%。 2、ネブラスカ州立大学エプリー癌研究所、Michael A.Hollingsworth博士より5種類のUDP-Nアセチルガラクトサミン転移酵素アイソザイム(T1,T2,T3,T4,T6)に対するマウスモノクローナル抗体を得て、膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous tumor ; IPMT)の手術材料を用い、免疫組織染色により発現を検討した。 3、2例の通常型膵癌組織ではT1,T2の発現は認められなかった。 4、2例のIPMT-腺腫のうち1例でT1の弱い発現(+)が見られた。また、2例のIPMT-腺癌のうち1例でT1の強い発現(++)が見られた。腺腫および腺癌とも、他の1例ではT1の発現は見られなかった。 5、各2例のIPMT-腺腫、IPMT-腺癌においてT2,T3,T4,T6の発現は確認されなかった。 6、通常型の膵癌ではT1の発現は認められないが、より粘液産生能の高いIPMTではT1の発現の見られる腫瘍があり、腺癌でより強い発現を示す傾向が示された。一方、培養膵癌細胞株において発現が報告されているT3の発現は今回検討したIPMT症例では確認されなかった。 7、T1の発現は膵癌細胞の粘液産生能と関連している可能性があり、今後さらに多くのIPMT症例および通常型の膵癌症例においてGalNAc transferaseアイソザイムの発現を検討する意義が示された。
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