研究概要 |
【目的】近年、ヒトの骨髄由来血液幹細胞(HSC)の骨髄移植の検討からHSCの肝細胞分化能が明らかにされ末期肝疾患に対する肝細胞供給源として期待されている。しかしながら、HSCは骨髄中での割合がわずかであり、しかもその増殖,培養が困難であるという問題や、レシピエント肝細胞とのfusionによって肝細胞になる可能性も指摘されている。従って、そのまま治療へ応用することは難しいと考えられる。そこで、我々は樹立および培養増殖が容易で分化のポテンシャルが高いことが知られているヒト骨髄間葉系幹細胞(MSC)に着目し、ラット慢性肝炎モデルを用いヒト肝細胞への分化を検討することとした。また、in vitroでMSCにhTERT、Bmi-1遺伝子を導入することでimmortalizeした後クローンを選択し、それらの肝細胞への分化能についても検討を加えることとした。【方法、成績】ヒト骨髄よりMSCを分離しallyl alcoholによる慢性肝炎ラットモデルの肝に直接局注した。その結果1週間でヒトAFP, albuminを発現し4週間でAlbumin, CK18, AGPR陽性でAFP及びCK19の発現が低下した成熟肝細胞からなるclusterを認め、ラット血清中にヒトalbuminの産生を確認した。またFISH法による検索では,細胞融合は認められなかった。さらにin vitroで効率良く増殖可能な肝細胞を得るため、hTERT遺伝子発現レトロウイルスならびにBmi-1遺伝子(国立がんセンター,清野透先生より供与)発現レトロウイルスをヒトMSCに感染させクローンを得た。これらにEGF,FGF-2,HGF,OsMを添加した培養液を用いて14日間培養したところalbuminを産生する肝細胞への分化が確認された。【結論】以上の結果は将来ヒトの自己骨髄MSCを難治性肝障害の治療に使用しうる可能性を示しているとともに、in vitroの肝細胞クローンはヒト肝細胞を標的とする様々な薬剤の開発やウイルス感染の仕組みなどを調べるための有力なtoolになりうることを示している。
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