肝の老化の位置付けは未だ明確ではないが、高齢者の急性肝障害は重症化し易い、高齢発症の慢性肝炎は肝硬変への進展が速いという臨床的報告や、高齢ラットでは肝再生能が低下しているという実験的報告は、今後増加の予想される高齢者の肝疾患に対して重要な課題を提示しているものと思われる。一方、SMP30は加齢とともに発現が減少するため老化機構に関わる蛋白と考えられ、肝に高発現することが知られている。我々はSMP30の肝細胞における役割を明らかにするため、HepG2細胞にpcDNA3/SMP30を導入することでtransfectantsを作製し、TNF-α plus Act-Dおよび血清除去刺激に対するアポトーシス誘導をmock transfectantsとの対比において比較検討した。TNF-α plus Act-Dにより誘導されるアポトーシスはtransfectantsで有意に抑制され、この作用はcalmodulin(CaM)阻害剤であるtrifluoperazineにより濃度依存性に解除された。又、SMP30の抗アポトーシス作用は血清除去によるアポトーシスにおいても観察された。一方、Western blottingによる解析では、Akt活性はtrifluoperazineにおいて恒常的に増強しており、TNF-α plus Act-Dの細胞死シグナルに呼応したものではないと考えられた。以上の結果より、SMP30は肝細胞における新しいアポトーシス制御因子であり、高齢者における肝障害の病態に関与している可能性が示唆された。
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