ラット28匹において全身麻酔下で開胸し動脈圧、左質圧、心拍数など記録できる状態で左冠動脈前下行枝を4.0絹糸にて閉塞し30分の虚血後に再灌流させた。その後生食投与群、0.15μg/100gのエンドセリン拮抗薬持続投与群、0.15μg/100gのエンドセリン拮抗薬とアルドステロン拮抗薬の持続同時投与群、4.5μg/100gの高濃度エンドセリン拮抗薬とアルドステロン拮抗薬の持続同時投与群に分けて再灌流後3時間、6時間さらに24時間後の血行動態を評価した。高濃度エンドセリン拮抗薬持続投与群で血圧の低下、心拍数の増加を認めたが、他群では有意な変化は認めなかった。しかしながら、左室拡張末期圧は低濃度エンドセリン拮抗薬とアルドステロン拮抗薬の持続投与群で全時間経過を通して有意に低かった。また麻酔、補液量は全群同じ状態であったが6時間以上の生存率は以下のようであった。生食群29%、高濃度エンドセリンとアルドステロン拮抗薬の持続投与群57%、低濃度エンドセリン持続投与群71%、低濃度エンドセリン拮抗薬とアルドステロン拮抗薬の持続投与群100%と有意な差が認められた。現時点ではエンドセリン拮抗薬とアルドステロン拮抗薬の併用がラット心筋虚血際灌流障害モデルにおいて左室拡張末期圧の改善効果をもたらすのか不明な点が多いが0.15μg/100gというごく低濃度のエンドセリン拮抗薬における左室拡張能の改善効果が明らかになり不整脈死、心不全死を予防することが示唆された。今後虚血領域、非虚血領域に分けた心筋組織におけるMCP-1の定量、炎症性サイトカイン、さらには線維化マーカーの定量を行うと同時に、構造蛋白を遺伝子発現レベルから検討し心機能改善や生命予後改善効果の期待できるシグナルを同定していく予定である。
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