1.心筋症の試料収集ならびに家系調査: 北陸地方を中心に心筋症の調査を行い、新たに関連の認められない肥大型心筋症患者(発端者)10名、拡張型心筋症患者(発端者)5名を検出し、総計肥大型心筋症380家系、拡張型心筋症140家系を同定した。これらの患者に関して、計画実施案に従ってインフォームド・コンセントを得た後、家族に関する聞き取り調査、発端者ならびに家族の心電図、心臓超音波検査、遺伝子診断用採血(EDTA血10ml)を実施した。 2.フォスフォランバン及びFKBP12.6遺伝子変異の検索: 心筋症発端者に関し、末梢血白血球からgenomic DNAを抽出し、PCR-SSCP法によりフォスフォランバン遺伝子変異、およびFKBP12.6遺伝子変異のスクリーニングを行った。PCR-SSCP法にて異常バンドが認められたものに関しては、直接シークエンス法を用いてDNA配列を解析し、RFLP法にて確認を行った。 3.検索結果: 遺伝子検索の結果、肥大型心筋症2家系、拡張型心筋症1家系でPLN遺伝子変異を検出した。肥大型心筋症家系Aの発端者:70歳男性では、変異Ile38Thrが検出された。心電図では巨大陰性T波が認められ、左室造影では典型的な心尖部型肥大型心筋症の形態が示された。肥大型心筋症家系Bの発端者は変異Ile45Valを有し、肥大型心筋症に典型的な非対称性中隔肥厚を示した。拡張型心筋症家系Cでは、変異Arg14delが検出された。家系内3名の女性全てで変異が認められ、心臓超音波検査では左室内腔の拡大と収縮能の低下が示された。現在さらに計画実施案に従って、FKBP12.6遺伝子の変異を検索中である。 4.研究成果の発表ならびに情報の収集 日本心臓病学会、日本循環器学会などの国内の心筋症ならびに循環器関連学会に出席し、上記結果の一部を報告し、また心筋症関連遺伝子に関する最新情報の収集を行った。
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