NADPHオキシダーゼは活性酸素を生成する酵素であり、生成された活性酸素は細胞の増殖、遊走、分化に重要な役割を担っている。成人末梢血に存在することが確認された骨髄由来血管内皮前駆細胞におけるNADPHオキシダーゼ発現および活性酸素の役割に関しては不明である。平成16年度は内皮前駆細胞培養を確立し、NADPHオキシダーゼの発現変化を調べて以下のような成果を得た。 (1)健康成人末梢血から比重勾配法により単核球を分離・培養した。アセチル化LDL取り込みおよび内皮細胞特異抗原(UEA1-lectin、CD31、vWF)の発現を免疫染色法で確認した。さらに、RT-PCR法でecNOS、VE-cadherin、KDRの発現を確認し、内皮細胞の形質を呈していることを確認した。 (2)NADPHオキシダーゼの膜コンポーネントであるgp91(NOX2)とそのホモログであるNOX4の遺伝子発現を、臍帯動脈由来内皮細胞(HUVEC)と内皮前駆細胞で比較した結果、それぞれの発現パターが異なることがわかった。さらに、内皮前駆細胞では培養経過とともにHUVECに似た発現パターンに変化した。 (3)p22発現は、HUVECと内皮前駆細胞でほぼ同程度で、培養経過でその発現はほとんど変化しなかった。 以上から、内皮前駆細胞と内皮細胞ではNADPHオキシダーゼコンポーネントの発現パターンが異なることが明らかになった。現在、これらの蛋白発現および細胞内局在をウェスタンブロット法と免疫組織学的手法を用いて確認している。 また、内皮前駆細胞を長期間培養している過程で、形態学的に、より内皮細胞に類似した細胞(late outgrowth endothelial progenitor cells)が増殖していることを確認した。本細胞は内皮前駆細胞よりも内皮細胞特異抗原を強く発現していること、マトリゲルアッセイで管腔形成能があることを確認した。さらにNOX発現パターンが血管内皮前駆細胞よりもHUVECと類似していることを確認した。
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