1)心臓線維芽細胞由来因子による心筋細胞の保護効果(低酸素条件下)についての検討 心筋細胞および線維芽細胞は生後0-2日のWistarラットの心臓から酵素法を用いて分離した。線維芽細胞由来因子の効果は、分離した線維芽細胞の培養上清を用い、血清やその他の成長因子を含まないDME培地を対照として検討した。心筋細胞培養における低酸素負荷は48時間とし、Trypan blue染色法にて細胞の生存率を評価した。その結果は対照群の生存率が平均24.5±5.5%であったのに対して、線維芽細胞培養上清群では54.1±3.0%(P<0.05)と有意に心筋細胞生存率の上昇を認めた。次に分子量フィルターを用いて培養上清を分子量5万で上下に分けて細胞保護活性を検討したところ、その効果は分子量5万以上の分画に存在した。 2)同因子の心臓生理機能に対する保護効果の検討。 Wistarラット(雄11-12週齢)から摘出した心臓でランゲンドルフ灌流系を組んだ。80mmHgの定圧灌流を行ない、毎分300回のペーシングにて心拍数を一定にした。線維芽細胞の培養上清で10分間の灌流後(対照は未処理のDME培地)、30分間の灌流停止と30分間の再灌流を行ない、左室内に挿入したラテックスバルーンを介して左室収縮期圧、左室拡張圧および左室発生圧を記録した。さらに電磁血流計を用いて冠灌流量を測定した。その結果、線維芽細胞の培養上清で処理した群では、左室拡張能のパラメータ(LV -dp/dt & LVEDP)および左室発生圧が有意に改善した。 冠灌流量は両群において差がなかった。この系においても分子量5万の上下にてその差異を検討したが、培養細胞の系と同様に分子量5万以上にその活性が認められた。 *上記の結果を欧州心臓病学会に発表すべく演題として応募した。(採択結果は6月に判明)また、原因物質のさらなる解明のために実験を継続中である。
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