心筋梗塞後に心筋細胞へ分化する骨髄由来幹細胞の性質を確認するため、各種の細胞を選別し骨髄移植した。まず最初に造血幹細胞由来であるか否かを確認するためにGFPトランスジェニックマウスから1個の造血幹細胞をFACSで単離し、レシピエントマウスに致死量の放射線を照射し骨髄移植を行った。また、全骨髄細胞を移植した群も用いた。ドナー細胞の生着率を確認後に骨髄移植後2ヶ月の時点で心筋梗塞モデルを作成し、G-CSFを投与した。灌流固定後に心臓を取り出して凍結切片を作成し、病理組織学的解析を行った。GFPによる骨髄細胞由来の心筋細胞を同定するとともに各種心筋特異的転写因子をin situ hybridizationで同定し心筋細胞への分化を確認した。心筋梗塞後の慢性期において、骨髄細胞由来の心筋細胞の有無を確認した。全骨髄細胞移植群ではGFP陽性の骨髄由来の心筋細胞を多数認めたが、造血幹細胞からの心筋細胞への分化は認められなかった。 次に間葉系幹細胞由来の心筋細胞(CMG細胞)にGFPをマーカーとして遺伝子導入することによって、移植の際にホストの細胞と区別することを可能とした。CMG細胞を骨髄移植することによって、骨髄中の間葉系幹細胞が梗塞巣へ動員されかつ分化することを確認した。間葉系幹細胞は、尾静脈からの注入では肺でトラップされてしまうため、マウスの骨髄に直接CMG細胞を骨髄移植した。造血幹細胞は、GFPでマーキングされていない細胞を移植した。骨髄移植後2ヶ月の慢性期に心筋梗塞を作成し、G-CSFを投与した。2ヶ月後に心臓を摘出し、骨髄も摘出して間葉系幹細胞が骨髄に正着していることを確認した。レーザー顕微鏡を用いてCMG細胞のin vivoにおける心筋への分化能を確認した。これらの結果から、心筋梗塞後における骨髄細胞由来の心筋細胞は造血幹細胞由来ではなく、間葉系幹細胞由来であると考えられた。
|