研究概要 |
インスリン抵抗性は動脈硬化進展の独立した危険因子であるが、本病態が血管内皮障害を来したり、動脈硬化へと進展する機序は未だ不明の部分が多い。カベオラは細胞膜のΩ型細胞内小器官であり、細胞内シグナリングに関与する。申請者は、(1)インスリン抵抗性例における内皮障害には、カベオラとそれを構築するカベオリン、flotillinの変化に基づくeNOS活性化などの異常が関与する、(2)ヒトにおいてカベオリンやカベオラの異常は、インスリン・シグナル系に影響を与えインスリン抵抗性発症に関与する、という2つの仮説を立て、本検討でこれらの仮説を検証している。インスリン抵抗性モデルは、ラットに高フルクトース食を8週間摂取させることにより作成した。このラットの胸部大動脈を単離し、カベオリンとflotillinの発現変化を検討すると、カベオリン-1の発現が増大し、カベオリン-2,-3やflotillinは不変であることがわかった。この変化の意義を解明するために、カベオリン-1,-3のshRNAを作成した。それぞれ5つのshRNAを設計し、BD knockoutキットを用いて発現ベクターに組み込んだ。H9C2細胞に発現させてmRNA抑制効果のスクリーニングし、もっとも強くmRNA発現を抑制するものを見いだした。これらは、shRNAはBD knockout adenovirusキットを用いてアデノウイルスに組み込んでいる。Preliminaryながら、shRNAを用いて培養血管内皮細胞のカベオリン発現を抑制すると、インスリン・シグナルに変化がみられることが示されている。現在、カベオリンのもう一つの阻害物質として、P132Lドミナントネガティブ・カベオリン-1の組み換えアデノウイルスも構築中である。今後はこれら阻害物質を用いて、さらに詳細にインスリン抵抗性におけるカベオラやカベオリンの役割を解明したい。
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