研究概要 |
すでに我々は気道上皮のcell lineであるA549細胞を用いたin vitroの系にて,マクロライドによるA549細胞からのGM-CSF産生抑制を介した間接的な好中球寿命延長抑制効果を確認している.さらに,気道上皮の初代培養細胞(small airway epithelial cell)を用いたin vitroの系においても検討したところ,A549細胞の場合と同様な結果が得られた.次に,より臨床に即した条件下での検討という目的で,急性気道感染マウスモデル(LPSの気管内投与モデル)を用いたin vivoの系で実験を行った.しかしながら,エリスロマイシン投与を行っても,得られた気管支肺胞洗浄液が持つ好中球寿命延長効果に対しては,有意な抑制効果を認められなかった.これらとは別に,マクロライドの作用機序に関して,コルチコステロイドとの作用の相違点・類似点に着目して新たな検討も加えた.以前我々は,好中球アポトーシスに及ぼすマクロライドの直接的効果をコルチコステロイドのそれと比較している.その結果は,マクロライドが好中球アポトーシスに有意な影響を及ぼさなかったのに対して,コルチコステロイドはそれを抑制する,すなわち好中球寿命延長の直接的効果を有するというものであった,さらに我々は,気道上皮細胞からのLipopolysaccharide-binding protein(LBP)産生についても,コルチコステロイドとの比較という観点から検討を加えた.LBPは最近,ヒトの2型肺胞上皮細胞からも産生されることが示され,エンドトキシンに対する肺局所での防御への関与が推測されている蛋白である.コルチコステロイドはLBP産生を誘導する作用を有する.我々の検討では,クラリスロマイシンは単独では効果を認めなかったものの,A549細胞からのコルチコステロイド誘導性LBP産生を有意に増強した.マクロライドの作用機序を考えるにあたり,コルチコステロイドとの作用の相違・類似点に着目していくことは重要と考えられ,さらなる検討を加える予定である.
|