HGFは各種領域で再生作用が報告され、胎児期の肺形成にも重要な物質であることに注目し、Elastase誘導肺気腫モデルマウスを作製し、HGFの気道内投与にて肺気腫病変の改善を図った。しかし組織学的検討(肺胞径測定)にて肺気腫はHGF投与にて悪化が認められた。肺組織のmRNAレベル・BAL中の蛋白レベルのサイトカイン等(TGF-β・MMP-12等)の測定にてHGFにてTGF-βが抑制されその結果MMP-12が増加することが確認された。このことは肺気腫悪化の一因と考えられた。HGFにて肺気腫の改善がみられなかった為、HGFにかえて同モデルに対してSTATINを腹腔内投与したところ、肺気腫の改善が見られた。STATINは近年Pro-inflammatoryサイトカインやMMPを抑える抗炎症作用が動脈硬化やリウマチ等の領域で、血管新生作用が下肢・心臓虚血病変にて報告されている。肺気腫改善の機序を免疫染色による細胞増殖の程度の比較・肺組織のmRNAレベルやBAL中の蛋白レベルのサイトカイン等の測定で検討した結果では、炎症性サイトカインの抑制は著明でなく増殖期細胞の増加を認め、抗炎症作用よりも傷害肺病変の細胞増殖促進・内皮機能改善作用が肺気腫改善の原因となっていることが示唆された。現在その確認のために骨髄幹細胞・内皮前駆細胞の関与を末梢血中やBAL中の内皮前駆細胞の増加があるかを調べ、内皮機能を反映するVEGFやp-selectinの測定を予定している。
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