平成18年度はヒト肺腺癌における翻訳開始因子eIF4Eと4E-BP1の発現が実際のヒトの臨床レベルでそれぞれ独立した分子標的療法のターゲットになりうるかどうかを検討した。その方法として、1.I期肺腺癌の患者において、外科的に切除された腫瘍組織内のeIF4Eと4E-BP1の蛋白発現を免疫染色で半定量化し、予後との相関関係を調べ、両者が独立した予後因子となりうることを証明し、英文投稿した。また、2.I-IIIA期肺腺癌の患者において、翻訳開始因子eIF4Eが遠隔転移の早期予測因子となりうることを免疫染色で半定量化された蛋白発現量と遠隔転移の関係を調べることで証明し、分子標的療法のターゲットとして実際のヒトの臨床レベルで更に魅力的な因子であることを強調した論文を英文投稿した。更に、3.eIF4Eの間接的抑制剤である分子標的薬RAD001(mTOR inhibitor)の効果予測因子として、腫瘍組織内のmTORの発現量を免疫染色で半定量化すると同時に、western blot法で蛋白定量し、発現量と投薬効果の関係を現在解析中である。また、4.翻訳開始因子のもう一つの重要因子eIF4Gについても、腫瘍組織内の発現量を免疫染色で半定量化すると同時に、western blot法で蛋白定量し、予後との相関を調べる一方で、分子標的薬RAD001のターゲットになりうるかどうかの検討を進めている。
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