研究概要 |
A.研究目的:転写因子Foxf1は、肺の間質細胞で産生され、その欠損マウスは発生段階において肺形成が阻害される。Target geneには成長因子であるHGFや、MMP-1,3などが確認されている。予後が不良な間質性肺炎であるUIPでは、線維化が吸収されないことのみならず、修復する上での上皮再生が不良であることが、UIPの病理形態学的な特徴である事が示されている。本研究では肺の形成に不可欠であり、間質性肺炎の発生機序に関連した多くのgeneを転写のtargetとするFoxf1に特に着目し、予後不良なUIPと予後良好なCOP肺組織の病変部における、m-RNAレベルでの発現、およびペプチド抗体を作成し、組織での分布を確認し、疾患特異性と病態の関連について検討した。 B.研究方法:外科的肺生検検体8例(UIP 4例、COP 4例)を対象とした。Foxf1の局在は、パラフィン包埋標本において、抗Foxf1ペプチド抗体を用いた免疫組織化学を行なった。また、凍結標本よりmicrodissection法を用いて、早期線維化巣を切り出し、各因子のmRNAの発現をRealtime PCR法にて測定した。 C.研究結果:(1)免疫組織化学結果:Foxf1は、早期線維化巣の線維芽細胞に陽性像を示した。COPではUIPに比較して強い染色性を示した。(2)RealtimePCR結果:Foxf1はUIPに有意に低発現であった。MMP-1はほぼ差異が見られなかったが、MMP-7はUIPで高発現の傾向であった。 D.考察:UIPでのFoxf1の低発現は、肺胞再生不良を反映している可能性が考えられる。予後不良のUIPでは維化巣における上皮の再生が不良であることが、線維化の吸収不良の一因と考えられている。Foxf1のtarget遺伝子には、HGF、MMP-1,3といった間質性肺炎の形成機序に関連する因子が含まれる。線維化を吸収するMMPを制御するFoxf1のUIPにおける低発現の傾向は、線維化の吸収不全に関連することが予想される E.結論:間質性肺炎におけるFoxf1の関与が示唆される。UIPでのFoxf1の有意な低発現は、血管形成不全、肺胞上皮再生不良、細胞外基質吸収の阻害を反映している可能性が考えられる。 F.研究発表:本研究内容は、16年12月の厚生労働省びまん性肺疾患調査研究班第二回班会議で報告した。
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