肺ガン細胞の培養上清の精製 10%FBS-DMEMでヒト肺ガン細胞株A549を培養したconditioned mediumに、ヒト肺線維芽細胞株MRC-5の形態変化を誘導する活性を見いだした。 本年度は、conditioned mediumを限外ろ過膜で分画した後、C18逆相カラム、SMARTシステムを用いて活性物質の単離を試みた。SMARTシステムで分析を行った結果conditioned medium中には、10%FBS-DMEMに含まれるピークとは異なるピークが含まれていることがわかった。さらに、そのピークを分取し、MRC-5に対して処理をおこなうと、4日間で形態変化が誘導されることがわかった。この物質の性状を調べるため、UVスペクトルを測定すると260nmに単一の極大吸収をもつ物質であることがわかった。 これまでの知見から、活性型の筋線維芽細胞から不活性型の星細胞へと形態変化を誘導する物質には、cAMPやPGE2が知られている。今回、EIA法を用いて、conditioned medium中のそれらの濃度を測定したが、MRC-5の形態変化における関与は見いだせなかった。 現在、FAB-MSを用いて、正確な分子量を測定中である。今後の予定としては、活性物質のNMRを測定し、物質の同定を進めていきたいと考える。 筋線維芽組胞の遺伝子およびタンパク質発現変化の検討 これまでの実験結果から、conditioned mediumでMRC-5を培養すると、細胞の増殖が抑制されることがわかった。そこでFACSを用いて細胞周期を解析すると、G0/G1とG2/M期で細胞周期停止が誘導されることがわかった。さらに、ウェスタンブロット法で細胞周期停止に関連するp21の発現を調べると、conditioned mediumで処理した群では、早期に発現が増加するという結果が得られた。今後、細胞周期停止とMAPKの関係を、さらに調べていきたいと考える。
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