水チャネルアクアポリン2(AQP2)蛋白がバゾプレシン刺激で細胞内プールから管腔膜へ移行(トラフィッキング)することで集合管の水透過性が亢進し尿は濃縮される。その細胞内輸送は体内浸透圧の根幹を成すものであるが、その機序の詳細は不明であった。今回我々は世界に先駆けてAQP2に直接結合し輸送を制御する2つの蛋白を同定した。Rap1のGAPであるSPA-1と細胞骨格のアクチンである。まず、pull down assayでPDZ領域との結合を認めたため、腎乳頭cDNA expression libraryを作成しPDZ抗体でイムノスクリーニングを行ったところSPA-1がクローニングされた。Pull down及び免疫沈降でも結合が確認され、腎臓での発現部位及び細胞内局在も一致した。尿細管由来培養細胞でのAQP2のトラフィッキングはSPA-1のGAP活性欠損体や活性型Rap1で阻害され、不活性型Rap1で促進された。SPA-1ノックアウトマウスでもAQP2のトラフィッキングが阻害され、尿濃縮能は障害された。またイムノアフィニティクロマトグラフィでAQP2結合蛋白を精製し二次元電気泳動を行いMALDI-TOF MSで解析したところ、SPA-1に加えてβ及びγアクチンが同定された。表面プラズモン共鳴による分子間相互作用のカイネティクス解析では強い結合が認められた。膜蛋白全般においてもGAP蛋白とアクチンが直接結合するという事実は全く報告されていなかったものであり、新たな細胞内トラフィッキング機構の解明につながると考えられる。現在さらに詳細なメカニズムの解析を行っている。
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