アクアポリン水チャネルAQP2の細胞内輸送(trafficking)は体内水分量調節の根幹を担い厳密に制御されており、膜蛋白輸送のモデルとして注目されている。前期間までに世界に先駆けて独自のアプローチによりAQP2に直接結合しそのtraffickingを制御する蛋白の同定に成功することができた。一つはGTPase activating proteinであるSPA-1であり、他方は細胞骨格のアクチンであった。このことから、AQP2はさらに多くの蛋白と複合体を形成し、AQP2を動かす力を発生させているのではないかと考えられた。このため今年度はさらにラージスケールでのイムノアフィニティクロマトグラフィを施行した。この結果、AQP2はSPA-1、アクチンを含めた13種類の蛋白と複合体を形成していることが認められた。同定された蛋白はアクチンダイナミクスを制御する能力を有しており、この複合体がAQP2を動かす直接のメカニズムを担っていることが考えられた。膜蛋白全体においてもGAP蛋白とアクチンが結合するという報告は皆無である。さらには膜蛋白が、その蛋白を運ぶ原動力を発生させていると考えられる複合体と直接結合しているという報告も皆無であり、蛋白輸送の新たなメカニズムを示すものである。さらにこの発見は輸送の直接の機序解明に必要な分子プローブを初めて提供することができたという意味でも重要である。このためAQP2と各種結合蛋白との分子間相互作用について一分子レベルでの解析を行い、複合体がAQP2を動かす機序についてさらに詳細な機序の解明を試みている。
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