研究概要 |
腎不全で亢進した酸化ストレス下に、糖酸化反応、脂質過酸化および(微小)炎症など様々な経路を介して発生する反応性カルボニル化合物、種々の活性酸素種および活性窒素種などによる蛋白修飾反応が惹起され、組織傷害をもたらすと考えられる。これらの反応産物の多くは酸加水分解等にも安定であるため、いかなる因子や経路が組織傷害を与えたかの特異的な足跡として解析上有用性が高く、これらの反応産物を指標として腎不全血管合併症抑制に対する酸化的蛋白修飾制御の意義を明らかにすることを目的とした。 臨床的検討が先行し、各種療法の蛋白修飾反応への効果ならびに透析患者生命予後との関連の解析に関し、健常者ボランティアにおける検討で植物性ω3系多価不飽和脂肪酸摂取による食事指導のfeasibilityを確認した(投稿準備中)。また維持血液透析例において栄養学的(植物性ω3系脂肪酸摂取)ならびに薬物(特に各種ARB、ACEI、HMGCoA還元酵素阻害薬など)による介入の、血中酸化的蛋白修飾物レベル、各種臨床指標、および血管合併症発症への影響を検討し、植物性ω3系脂肪酸高含有食用油の摂取が酸化的蛋白修飾の指標である血中ペントシジンレベルならびに微小炎症に関連する可能性が示唆された(未発表)。 これに関連した基礎的検討としてIgA腎症モデルであるHIGAマウスを用いた検討で植物性ω3系脂肪酸高含有食用油の混餌群により対照群に比し尿蛋白減少ならびにメサンギウム基質増加の抑制を認めることを示し(投稿準備中)、酸化的蛋白修飾の制御との関連の検討に着手した。また薬物の蛋白修飾抑制作用スクリーニング系として無細胞系における還元糖自動酸化系,ONOO^-産生系などの簡便な蛋白修飾反応系の構築が進行した。
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