【背景・目的】糖尿病性腎症(DN)における骨病変の病態生理については未だ不明な点が多い。昨年度の研究結果より、高血糖による各種骨細胞の機能異常に加え、腎機能低下が付加されることにより骨代謝回転が相加的に抑制されること、腎機能低下によって高血糖環境が緩和されても骨形成は持続的に低下することが確認された。これらの結果より、DNにおける骨病変の発症・進展には、腎機能低下によって血中に蓄積する尿毒症毒素が付加的に関与していると考えられた。本研究では、DNを呈するモデル動物を用い、尿毒症毒素の蓄積を防止した場合の骨代謝について検討を行った。【方法】低容量ストレプトゾトシン投与により糖尿病ラットを作成し、その動物に部分腎摘を行い、糖尿病性腎症モデルラット(DN群)を作成した。DN群を2群に分け、一方には尿毒症毒素の体内蓄積を防止する経口吸着剤(AST-120)を投与した(DN-K群)。【結果】DN群に比べDN-K群では尿毒症毒素の一つであるインドキシル硫酸(IS)の血中濃度の低下および尿中蛋白排泄量の低下が見られた。また、尿中の糖排泄量の低下も明らかとなった。【考察】ISは腎および骨に対し細胞障害性を有することがこれまでの研究で明らかになっている。経口吸着剤の投与は、血中のIS濃度の低下をもたらしたことより、骨組織でのISによる各種骨細胞に対する細胞障害性は軽減された可能性が推察された。また、血中IS濃度の低下により骨、腎以外の臓器への障害性の緩和が推察されたため、尿中糖排泄量を測定したところDN-K群では低下していた。血糖値はDN、DN-K群間で有意な差が認められなかったことから、ISを含む血中尿毒症毒素の蓄積を抑制することは、少なくとも筋での糖の取り込みを維持させる可能性が考えられた。現在、非脱灰薄切標本を作製し、骨形態計測を行い骨代謝回転についての解析を行っている。
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