(目的)器官形成期においては様々な増殖因子が重要な役割を演ずることが知られている。我々は過去に初期発生段階の腎臓(metanephros)で産生されるVEGFとbasic FGFが胚由来の血管組織から血管形成を誘導することを報告した。これらの増殖因子のmetanephros成長時における役割について検討するとともに、介在因子の検索を行った。 (方法)マウス胚由来metanephrosを種々の条件で器官培養して、免疫組織学的検討を加えた。 (結果)VEGFあるいはbasic FGFの中和抗体は、それぞれ独立してmetanephros内の血管構築を抑制した。この抑制効果はおのおのの中和抗体の共存下において更に増強した。これらの中和抗体は集合管の分岐に対しても抑制効果を示し、その効果は両者共存下において更に増強した。一方、外因性にVEGFあるいはbasicFGFを加えると、metanephros内の血管構築が増強したのに加えて、集合管の分岐もそれぞれ独立して刺激された。両者共存下においては血管構築が増強し、集合管の分岐も更に刺激された。一方、低酸素条件下での血管形成過程においては、シクロオキシゲナーゼの活性化が関与することが最近注目されていることから、これらの阻害因子の存在下での集合管の分岐過程の検討を行ったところ、シクロオキシゲナーゼ-2の阻害因子では分岐過程が抑制されなかったのに対し、非特異的シクロオキシゲナーゼ阻害因子の存在下では集合管の分岐が著明に抑制された。 (結論)血管新生および血管形成に重要な役割を果たすことで知られるVEGF及びbasicFGFは腎臓の初期発生過程においては、血管構築のみならず集合管の分岐過程においても重要な役割を果たしているものと考えられた。また、集合管の分岐過程には、シクロオキシゲナーゼの活性化が関与している可能性が示唆された。
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