研究概要 |
維持透析患者において高頻度に認められる動脈硬化性病変と酸化アルブミン(HNA)との関係を明らかにするために、動脈硬化性病変の血清学的マーカーとHNAを測定し比較した。総コレステロール、中性脂肪、LDL-Chol等の一般的な血清脂質高値は、動脈硬化性病変の危険因子と考えられているが、今回の検討ではHNA値及びHNA/還元型アルブミン(HMA)比との相関は認められず、RLP-コレステロール、LP(a)、各種アポリポ蛋白との関連も見られなかった。しかし、MDA- LDL、小粒子LDL等の酸化LDLと相関が認められ、HNAが脂質過酸化を反映している可能性が示唆された。そこで、血中フリーラジカル産生能を反映し、血液環境の過酸化状態を定量可能なTROS[血中で産生されたHO・、H2O2、LO・、RO・、ROO・をDEPPD(N,N- diethyl- parapphenylene- diamine)と反応させ、吸光度で定量したもの]で測定したところ、HNAと明らかな相関が認められた。このことより、血清アルブミンの酸化は血液抗酸化プール減少に繋がっていることが示唆された。このHNA比の変化が透析量に由来するものであるか否かを検討するため、透析量・尿素窒素平均値との関連を見たが、現時点では明らかな傾向は見られていない。今後、同一症例で複数回の測定が必要と思われた。HNA比は維持透析患者で高値を示し、動脈硬化性病変と関連が示唆されている血中総ホモシステイン濃度とも弱い相関があり、これら代謝異常がHNA比増加の原因となっていることが疑われるが、透析症例においては、数多くの尿毒症物質が存在しており現在HNA増加の原因も検討中である。また、HNA比増大が、実際に動脈硬化性病変と関連が有るかを検討するため、頸動脈エコー、ABI、PWV等の生理学的検査を行う。
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