研究概要 |
血小板は末梢性のアミロイド前駆体蛋白(APP)、βアミロイド(Aβ)の主要な産生源である。また、Aβ代謝に関して脳と関連した変化を示す可能性があることが報告されており、アルツハイマー病(AD)の脳の病態を反映する末梢臓器として注目される。今回、ADの末梢性の診断マーカーとして報告される血小板APPの組成変化の有用性を検討した。 方法:12名のAD患者と11名の非痴呆コントロールの血小板試料を用いたウエスタンブロットを行い、APP120-130kDバンドとAPP106-110kDバンドのバンド濃度比(APP ratio)を測定した。また、血小板APP ratioの変化の機序を明らかにするために、APP特異抗体によるウエスタンブロット分析を行った。 結果:120-130kDAPPはAβの1-17アミノ酸残基までが存在しており、α切断部位でC端側が切断された分泌型APPであり、106-110kD APPはさらにN端よりまで切断された分泌型APPであった。106-110kD APPはβ切断された形の可能性も考えられ、APP ratioの低下(106-110kD APPの120-130kD APPに対する相対的増加)は、ADの病態のひとつと考えられるβsecretase活性の亢進による可能性が示唆された。APP ratioについては、今回の少数例の検討ではAD患者と非痴呆コントロールの間で有意差は認めなかった。また、血小板APP ratioと血清Aβ,ApoE多型,血清コレステロール値との相関も認めなかった。 結語:今後は、症例数を増やしての再検討を行うと共に、血小板APP ratio変化の機序と推測される血小板βsecretase蛋白量および酵素活性を検討する予定で、測定系を作成中である。
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