血小板は末梢性のアミロイド前駆体蛋白(APP)、βアミロイド(Aβ)の主要な産生源である。また、Aβ代謝に関して脳と関連した変化を示す可能性があることが報告されており、アルツハイマー病(AD)の脳の病態を反映する末梢臓器として注目される。血小板APP代謝異常に関係する可能性のある血小板中のAPPのβセクレターゼ(BACE1)の蛋白量と酵素活性を測定し、ADの末梢性の診断マーカーとしての有用性を検討した。 方法:薬物投与のないアルツハイマー病(AD)患者12例と、11例の非痴呆コントロールから採血、分離した血小板を用いた。1.血小板BACE1の存在を確認するため、血小板試料の蛋白量5μg分をwestern blot分析した。2.BACE1蛋白量測定は、固相に抗BACE1 C端抗体をコート、検出用抗体は抗BACE 46-65抗体を用いたsandwich ELISA法を用いた。3.BACE1酵素活性は、ELISA同様の方法で固相にcaptureしたBACE1に、protease cleavageにより発光するAPP基質を作用させ、蛍光プレートリーダーを用いて、蛋白量20μgの血小板試料を測定した。 結果:1.血小板試料のwestern blotで脳から調整したBACE1と同位置(50、55kD)のバンドを確認した。2.BACE1蛋白量:血小板BACE1蛋白レベルには群間で有意差を認めなかった。3.血小板BACE1活性はAD群で対NC群比114%であったが、統計的有意差は認めなかった(NC群に対してp=0.36)。また酵素活性/蛋白量比にも有意差は認めなかった。 結語:血小板APP ratio変化の機序と推測される血小板BACE1の蛋白量と酵素活性を検討した。少数例の検討では有意な異常を認めなかった。各測定系の改良および、多数例の検討を予定している。
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