重症筋無力症(MG)の診断において、抗AChR抗体の測定は必須であるが、その抗体価は必ずしも病勢と一致せず、また予後の判定には有用ではない。またMG患者の血清には、横紋筋由来の蛋白であるtitinやryanodine receptorに対する抗体が存在するが、その臨床的意義は乏しい。本研究では、MG患者血清を用いて横紋筋肉腫RDに発現する横紋筋特異的な蛋白に対する自己抗体のスクリーニングを行い、新規自己抗体を同定し、その臨床的意義について検討を行った。 MG患者61例、疾患コントロールとして多発筋炎PM/DM27例、健常人5例の血清を対象として、35Sで標識した細胞とprotein A sepharoseを用いて患者血清中のIgGと反応する蛋白を免疫沈降法IPで検出した。用いた細胞はRDと白血病細胞K562で両者の沈降パターンを比較し、RDで沈降し、K562で沈降しない蛋白を、横紋筋特異的な蛋白と判断した。この中で、70kDa蛋白に対する自己抗体はMG血清の18%に認められ、本蛋白の同定を試みた。陽性患者血清に結合したprotein A sepharoseとRDを反応させ、affinity-purificationにより70kDaに相当する蛋白を精製した。この蛋白を同定する目的で、アミノ酸分析、二次元電気泳動、Immunoblotsの実験を行い、Voltage gated K channelのαサブユニットの1つ、Kv1.4であることを証明した。 臨床像からの解析では、抗Kv1.4抗体陽性MGは球症状やクリーゼを合併する重症MGと胸腺腫に相関していた。また心筋炎と心電図上QT延長が高頻度に認められ、予後判定に有用な指標と考えられる。
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