タイラーウイルスの慢性亜群DA株による持続感染・脱髄にはポリ蛋白の最もN末端に位置するL蛋白とL蛋白の13塩基下流にL蛋白の翻訳領域と重複するout-of-frameのもう一つの開始コドンから翻訳されるL^*と呼ばれる蛋白が重要な役割を担っていると考えられている。LおよびL^*蛋白は合成後、ウイルス粒子には取り込まれず宿主細胞内に残存する。しかしながら、LおよびL^*蛋白と相互作用する宿主因子を同定するに至っていない。 そこで本研究では、Bacterial two-hybrid system(Stratagene社)を用いてLおよびL^*蛋白の標的分子の検索を行った。LおよびL^*蛋白が相互作用する宿主因子の検索は、DA株が感染初期には神経細胞に感染し、その後、脊髄に移行し持続感染することと、ウイルスの持続感染により一連の免疫機構が作動し脱髄が起こると考えられていることから、脳および脾臓由来のcDNAライブラリーを用いて検索を行った。L^*蛋白を用いた検索の結果、最終的に脳および脾臓由来のcDNAライブラリーから32と224個の陽性クローンがそれぞれ得られた。また、L蛋白を用いた検索の結果、脳および脾臓由来のcDNAライブラリーから32と132個の陽性クローンがそれぞれ得られた。得られた陽性クローンの塩基配列を決定し、相同性検索を行った結果、L^*蛋白はIFN-γinduced GTPase、apoptosis-inducing DNA sequence、α-tubulinおよびcathepsin Bなどが見出された。また、L蛋白はinterleukin 2 receptor gamma(IL-2Rγ)鎖の細胞内ドメインおよびclathrin-associated protein AP50などが見出された。 以上の結果から、LおよびL^*蛋白と相互作用を示す蛋白の遺伝子がクローニングされた。
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