研究概要 |
本年度は、in silico膵β細胞インスリン分泌調節モデルの構築に関連して、膵島細胞に発現する電位依存性Ca^<2+>チャネル(VDCC)の新たな機能的発現調節因子RGK-proteinならびにVDCC活性調節関連因子Cdk5を同定し、多様な膵島細胞VDCC調節機構の一端を明らかにした。 グルコースおよびインスリン分泌促進薬刺激による膵β細胞インスリン分泌において、ATP感受性K^+(K_<ATP>)チャネルを介する経路は主要な経路であり、この経路の鍵となる分子としてK_<ATP>チャネルおよびVDCCがある。膵島細胞VDCC活性は多様な調節因子(三量体G蛋白質、protein kinase、calmodulinなど)により調節され得ることが報告されてきた。今回我々は、低分子量G蛋白質に属するRGK-protein(kir/Gem, Rad, Rem)が、VDCCβサブユニット結合抑制により、膵β細胞膜面へのVDCC機能的発現を抑制することを見いだした(Biochem J. 390(1):67-75,2005、J Cell Sci. 118:1923-34,2005、J Biol Chem. 280(10):9308-12,2005)。また、serine-threonine kinaseの一つであるCdk5の活性抑制により、SNARE proteinのVDCCとの結合調節を介してVDCC活性を増強することを明らかにし、これらの蛋白質が糖尿病治療薬(インスリン分泌促進薬)の標的因子となり得ることを示した(Nature Med. 11(10):1104-8,2005)。これらの知見は、今後、インスリン分泌障害発症機序の解明および新規糖尿病治療薬(インスリン分泌促進薬)の創薬上の標的候補因子に繋がる可能性がある。
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