糖尿病モデルマウスにおいてATP-Binding Cassette Transporter A1 (ABCA1)遺伝子は血糖やインスリンの直接作用ではなく、糖尿病において上昇する不飽和脂肪酸およびケトン体によって抑制されることを報告してきた。 不飽和脂肪酸およびケトン体はABCA1遺伝子プロモーター(0.98kb)活性を用量依存的に抑制し、さらに数種類の短断ABCA1プロモーター(0.98〜0.29kb)を作製し検討した結果、ケトン体は0.29kbプロモーターにおいてのみ、その抑制は有意に減弱していた。そのため、培養RAW264マクロファージ様細胞系を用いて、0.32kb〜0.29kbに存在するE-box、AP1領域の点変異導入ヒトABCA1プロモーターをそれぞれ作製し、ケトン体による転写活性抑制への影響をwild typeと比較検討した。その結果、E-box点変異導入プロモーターにおいて、ケトン体(アセトアセテート)依存性の転写活性抑制の消失が認められた。同様に不飽和脂肪酸による転写活性抑制責任領域を同定するために、E-box、AP1およびDR4領域点変異導入ヒトABCA1プロモーターを用いて、wild typeプロモーターと比較検討した結果、DR4領域点変異導入プロモーターにおいて、不飽和脂肪酸による転写活性抑制の消失が認められた。 これらの結果はケトン体および不飽和脂肪酸が、それぞれABCA1プロモーター中に存在するE-box、DR4エレメントを介してABCA1遺伝子発現を抑制していることを解明した。
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