研究概要 |
(1)白血病細胞由来HSPを用いた免疫療法における抗白血病細胞特異抗体検出の検討 Balb/cマウス(H2d)白血病細胞株A20および同系マウス肝由来のHSP70を精製し、健常Balb/cマウスに(1)PBS(control),(2)肝由来HSP70(control),(3)A20-HSP 40ugを各群5匹に4回免疫し、最終免疫後1,2,3週目の血清を採取した。各群マウスのプール血清を用い以下の実験を行った。 (1)-1 抗A20細胞抗体を検出するため、上記(1)^-(3)の各群の希釈血清を一次抗体とし、A20細胞に対してFITC標識抗マウスIgを二次抗体とするflowcytometerを用いて平均蛍光強度(MFI)を算出した。(3)群のA20細胞のMFIは、(1),(2)群に比較して高値を示した。 (1)-2 A20細胞lysateを抗原とし上記(1)^-(3)の各群血清を1次抗体としてWestern Blotを行い、control群とA20-HSP群でのバンド発現の違いを検討中である。 さらに、特異抗体検出を確実に行うため、A20細胞由来のHSP70を抗原とし、(1)^-(3)の各群血清を1次抗体としてELISAを施行し、(3)群ではA20由来HSP70を認識するIgG抗体価は、(1),(2)群に比較して有意に高値を示した。以上より、A20-HSP70の免疫マウスの血清中には、HSP70に結合するA20細胞由来のペプチドに対する特異的なIgGが産生されている可能性が考えられた。またこれらの実験では3週目の血清が最も顕著な差を認めた。よって以下の(2)は3週目の血清を用いて行った。 (2)in vivoおよびin vitroにおける腫瘍特異抗体を介した細胞傷害活性誘導(CTX)の検討 上記(1)の系から得られた各群のプール血清を用いて以下の実験を行った。 (2)-1 (1)^-(3)の各群血清とA20細胞を混合培養し、MTT assayによりA20細胞に対するCTXの有無を検討中したが有意な結果が得られなかったため、補体も添加しCDC(補依存性CTX)を検討したところ、(3)群血清では(1)、(2)群に比べて有意なCDC活性を認めた。また、単核球を加えた傷害活性(ADCC)の誘導を検討したが、これに関しては(3)群と(1)、(2)群で有意な差を認めなかった。(1),(2)よりA20由来のHSP70免疫マウスにおける抗白血病細胞免疫の機序の一つとして、白血病細胞由来HSP70に結合するペプチドに対する特異抗体の産生と、その抗体を介したCDCの関与が示唆された。現在H2d由来のpeptideを用いて、更に特異抗体の検出を試みると共に、(2)-1で得られた情報を元に、A20-HSP免疫マウス血清を、A20を接種した白血病マウスに注射し、生存日数をcontrol血清と比較検討の予定である。
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