研究概要 |
本年度はc-Cblの細胞骨格制御機構を明らかにするため、c-Cblとその他の細胞骨格制御因子との相互作用についてさらに解析を進めた。まず、c-Cblが実際にこれらの細胞骨格関連分子と結合していることを確認するために、免疫沈降実験を行ったところ、c-Cblとp130Cas, FAK, Crkとの結合が確認できた。そして、Cblノックアウト細胞においてはFAKの自己リン酸化レベルがやや減弱しており、本キナーゼ活性の減弱がp130Casのリン酸化の減弱に関与している可能性が示唆された。 そこで、これらの分子の下流で細胞骨格制御により直接的な作用を持つ、Rac, Rho等の低分子量Gタンパク質の活性化状態を検討した。その結果、Cblノックアウト細胞ではインテグリンシグナル入力以前より、恒常的にRac, Rhoの活性増強が認められ、シグナル入力後も大きく活性化レベルは変化していないことが明らかとなった。 以上より、Cblノックアウト細胞においては、FAK→p130Casというインテグリンシグナル伝達因子の活性化(リン酸化)が減弱しており、一方でRac, Rho等、より下流の細胞骨格制御分子には活性化が認められることが判明した。本現象は一見矛盾する結果であり、これを説明するため現在その他の細胞骨格制御シグナル伝達因子についてその活性化状態の検討を行っているところだが、以上の結果よりc-Cblを介した何らかの細胞骨格制御システムが存在することは明らかと考えられる。本研究は、これまでT細胞でのシグナル抑制因子として主に研究されてきたc-Cbl分子に、Rac, Rhoまで至る細胞骨格制御機能が存在することを明らかにした点で意義深いと考えられる。
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