研究概要 |
蛇毒蛋白ロドサイチンは、コラーゲンに似た血小板凝集作用を持つが、コラーゲン受容体GPVI/FcRγ-chainに非依存性であり、その活性化機序の解明が注目されてきた。本研究ではロドサイチンのアフィニティークロマトグラフィーとMS/MSによる解析を行い、ロドサイチンに結合する32kDaの血小板上受容体CLEC-2(c-type lectin-like receptor2)を同定した。 平成16年度には、この受容体は、培養細胞に発現させるとロドサイチン惹起シグナルが再現されることを見出した。また特異抗体を用いたフローサイトメーターで、血小板でのCLEC-2の発現を確認した。細胞内にひとつのYxxLモチーフを持つCLEC-2は、ロドサイチン刺激でSrc依存性にチロシンリン酸化され、そこにチロシンキナーゼSykが結合することがわかった。平成17年度には、ノックアウトマウスを用いた実験を行い、ロドサイチンによる血小板活性化は、Syk、あるいはその下流のPLCγ2の欠損マウスでは完全に消失することを見出した。また、PLCγ2の活性化に必要といわれているアダプター蛋白LAT、SLP-76やGTP exchange factorであるVav1/3欠損マウスでは部分的に抑制された。 以上より、CLEC-2はロドサイチンの受容体であり、ロドサイチン刺激によりSrc依存性にYxxLがチロシンリン酸化され、Syk, PLCγ2の活性化を生じることが示された。CLEC-2は生体内で血栓止血に何らかの役割をもつ可能性がある、新しい血小板シグナリング受容体であり、抗血栓薬の新規ターゲット蛋白となりうる。これまでSykは二つのYxxLを有するITAMに結合し活性化されることが知られていたが、CLEC-2はひとつのYxxLを介してSykを活性化するユニークなメカニズムを持つ。最近、同様なSyk活性化機序をもつCタイプレクチンファミリーが報告され、このSyk活性化様式は普遍的である可能性がある。
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