研究概要 |
本年度は主として胚性幹(ES)細胞を中心とした研究を行った。まず、カニクイザルES細胞を用いて血液細胞を誘導し、さらに長期(約5ヶ月)にわたる培養系を確立した。次にマウスES細胞を用いて同様に長期培養を行い、エリスロポエチン(Epo)依存性の赤芽球細胞株(Mouse ES Derived Erythroid Progenitor ; MEDEP)を樹立した。MEDEPはEpoを除くことにより脱核赤血球に分化することが出来る細胞であることが判明した。また、ステムセルファクター(SCF)、インターロイキン3(IL-3)依存性の肥満細胞株(Mouse ES Derived Mast Cell ; MEDMC)の樹立にも成功した。MEDMCはFcε受容体を発現している成熟肥満細胞であることが示唆された。これらカニクイザルES細胞、カニクイザルES細胞由来分化誘導細胞、MEDEP、MEDMCを用いてMusashi1,Musashi2,HoxA9各遺伝子の発現をRT-PCRにより解析した。Musashi1およびHoxA9はともにカニクイザルES細胞、カニクイザルES細胞由来分化誘導細胞、MEDEP、MEDMCで発現が見られなかった。一方、Musashi2はカニクイザルES細胞では発現が見られなかったが、分化誘導後7日目(胚型赤血球が産生される直前)で発現が見られ、その後、発現量が減少していくことがわかった。また、MEDEPでは高い発現がみられ、Epoを除き分化が進むことにより発現が増強することが確認された。しかしMEDMCでの発現は認められなかった。これらのことからMusashi2が赤血球系細胞の分化に関与していることが示唆された。今後はMEDEPを用いてMusashi2遺伝子の過剰発現、発現抑制実験を行い、赤血球系細胞分化におけるMusashi2遺伝子の機能解析を行う予定である。
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